医療費控除が大きく変わりました
平成29年分確定申告(申告期限平成30年3月15日)から大きく変わった医療費について解説します。
保存書類からセルフメディケーション税制までこれだけ見れば、医療費控除のすべてがわかります。
目次
平成29年から医療費控除の何が変わったのか?
- 医療費控除の提出書類が簡略化されました。
平成29年分の確定申告から医療費控除を受ける場合には、「医療費控除の明細書」を提出することにより、「医療費の領収書」の提出又は提示は不要となりました。
「医療費控除の明細書」には、「医療費の領収書」等に記載された事項を記載します。
なお、この場合、医療費の領収書を確定申告期限等から5年間ご自宅等で保存する必要がありますのでご注意ください。 - セルフメディケーション税制が創設されました。
健康の保持増進及び疾病の予防として一定の取組を行っている方が、平成29年中に自己又は自己と生計を一にする配偶者その他の親族のために12,000円以上の対象医薬品を購入した場合には、「セルフメディケーション税制」(通常の医療費控除との選択適用)を受けることができます。
セルフメディケーション税制については、下記に詳しく記載しておりますので、ご覧ください。
医療費控除とは
https://www.nta.go.jp/taxanswer/shotoku/1120.htm
国税庁タックスアンサー No.1120 医療費を支払ったとき(医療費控除)
医療費控除の概要
その年の1月1日から12月31日までの間に自己又は自己と生計を一にする配偶者やその他の親族のために医療費を支払った場合において、その支払った医療費が一定額を超えるときは、その医療費の額を基に計算される金額の所得控除を受けることができます。これを医療費控除といいます。
医療費控除の金額
医療費控除の金額は、次の式で計算した金額(最高で200万円)です。
(実際に支払った医療費の合計額-(1)の金額)-(2)の金額
1.保険金などで補填される金額
(例) 生命保険契約などで支給される入院費給付金や健康保険などで支給される高額療養費・家族療養費・出産育児一時金など
(注) 保険金などで補填される金額は、その給付の目的となった医療費の金額を限度として差し引きますので、引ききれない金額が生じた場合であっても他の医療費からは差し引きません。
2.10万円
(注) その年の総所得金額等が200万円未満の人は、総所得金額等の5%の金額
かかった医療費-10万円
ただし、所得が少ない(総所得200万円以下)の人は、10万円部分が総所得の5%になります。
医療費控除の対象となる医療費
医療費控除の対象となる医療費は次のとおりであり、その病状などに応じて一般的に支出される水準を著しく超えない部分の金額とされています。
- 医師又は歯科医師による診療又は治療の対価(ただし、健康診断の費用や医師等に対する謝礼金などは原則として含まれません。)
- 治療又は療養に必要な医薬品の購入の対価(風邪をひいた場合の風邪薬などの購入代金は医療費となりますが、ビタミン剤などの病気の予防や健康増進のために用いられる医薬品の購入代金は医療費となりません。)
- 病院、診療所、介護老人保健施設、介護療養型医療施設、指定介護老人福祉施設、指定地域密着型介護老人福祉施設又は助産所へ収容されるための人的役務の提供の対価
- あん摩マッサージ指圧師、はり師、きゅう師、柔道整復師による施術の対価(ただし、疲れを癒したり、体調を整えるといった治療に直接関係のないものは含まれません。)
- 保健師、看護師、准看護師又は特に依頼した人による療養上の世話の対価(この中には、家政婦さんに病人の付添いを頼んだ場合の療養上の世話に対する対価も含まれますが、所定の料金以外の心付けなどは除かれます。また、家族や親類縁者に付添いを頼んで付添料の名目でお金を支払っても、医療費控除の対象となる医療費になりません。)
- 助産師による分べんの介助の対価
- 介護福祉士等による一定の喀痰吸引及び経管栄養の対価
- 介護保険制度の下で提供された一定の施設・居宅サービスの自己負担額
- 次のような費用で、医師等による診療、治療、施術又は分べんの介助を受けるために直接必要なもの
- 医師等による診療等を受けるための通院費、医師等の送迎費、入院の際の部屋代や食事代の費用、コルセットなどの医療用器具等の購入代やその賃借料で通常必要なもの(ただし、自家用車で通院する場合のガソリン代や駐車場の料金等は含まれません。)
- 医師等による診療や治療を受けるために直接必要な、義手、義足、松葉杖、補聴器、義歯などの購入費用
- 傷病によりおおむね6か月以上寝たきりで医師の治療を受けている場合に、おむつを使う必要があると認められるときのおむつ代(この場合には、医師が発行した「おむつ使用証明書」が必要です。)
(注)
- 医療費の中には、身体障害者福祉法、知的障害者福祉法などの規定により都道府県や市町村に納付する費用のうち、医師等の診療等の費用に相当するものや前記(1)・(2)の費用に相当するものも含まれます。
- おむつ代についての医療費控除を受けることが2年目以降である場合において、介護保険法の要介護認定を受けている一定の人は、市町村長等が交付する「おむつ使用の確認書」等を「おむつ使用証明書」に代えることができます。
- 骨髄移植推進財団に支払う骨髄移植のあっせんに係る患者負担金
- 日本臓器移植ネットワークに支払う臓器移植のあっせんに係る患者負担金
- 高齢者の医療の確保に関する法律に規定する特定保健指導(一定の積極的支援によるものに限ります。)のうち一定の基準に該当する者が支払う自己負担金(平成20年4月1日から適用されます。)
医療費控除の対象となる歯の治療費の具体例
歯科に関する医療費控除については、多くの特例が規定されています。こちらの記事も併せてご覧ください。
医療費控除の対象となる入院費用の具体例
- 入院に際し寝巻きや洗面具などの身の回り品を購入することがありますが、これは医療費控除の対象になりません。
- 医師や看護師に対するお礼は、診療などの対価ではありませんから医療費控除の対象になりません。
- 本人や家族の都合だけで個室に入院したときなどの差額ベッドの料金は、医療費控除の対象になりません。
- 付添人を頼んだときの付添料は、療養上の世話を受けるための費用として医療費控除の対象となります。所定の料金以外の心付けなどは除かれます。また、親族などに付添料の名目でお金を支払っても控除の対象になりません。
- 入院中は病院で支給される食事を摂ることになります。これは、入院代に含まれますので医療費控除の対象になります。しかし、他から出前を取ったり外食したものは、控除の対象にはなりません。
健康保険組合などから支払われる高額療養費や生命保険契約などの特約により支払われる入院費給付金などを受け取っている場合は、その金額を支払った医療費から差し引かなければなりません。
(注)入院に係る費用を補填する入院給付金の額は、その給付の目的となった入院に係る医療費の額から差し引くことになっており、引ききれない金額が生じた場合であっても、他の医療費の額から差し引く必要はありません。
医療費控除を受けるための手続
医療費控除に関する事項その他の必要事項を記載した確定申告書を所轄税務署長に提出するか、電子申告(e-tax)にて申告してください。
医療費の領収書から「医療費控除の明細書」を作成し、確定申告書に添付してください(給与所得のある方は給与所得の源泉徴収票(原本)も必要です。)。
医療保険者から交付を受けた医療費通知がある場合は、医療費通知を添付することによって医療費控除の明細書の記載を省略することができます。
なお、医療費控除の明細書の記載内容を確認するため、確定申告期限の翌日から起算して5年を経過する日までの間、医療費の領収書(医療費通知を添付したものを除きます。)の提示又は提出を求める場合があります。
医療費控除の明細書の書き方
医療費控除の明細の書き方については、下記に詳しく記載しましたので、併せてご覧ください。
医療控除の明細書を書くのがめんどくさいという方
経過措置として、平成29年分から平成31年分までの確定申告については、明細書を確定申告書に添付せず、領収書を確定申告書に添付するか、確定申告書を提出する際に提示することによることもできます。
税務調査で医療費控除を指摘されるのか?
私の事務所では、何百人の方もの個人の確定申告を毎年行っております。
40年以上の歴史がございますが、
過去に個人の所得税の調査で医療費控除について指摘を受けたことは一度もありません。
まず調査で指摘を受けることはありませんが、法律上5年領収証の保管が義務付けられているので、
きちんと保管しておいてください。
としか、税理士からは言えません(笑)
まとめ
- 原則はかかった費用-10万円が控除額。よって、10万円以上の費用がなければ控除は受けられません。
- 本人以外にも家族の医療費も合算できます。
- 平成31年までは、医療費控除の明細書を作成しなくてもOK。
- セルフメディケーション税制との併用はできません。
また、これらのいずれかの適用を選択した後、更正の請求や修正申告によりこの選択を変更することはできません。